「定期預金」や「個人向け国債」などが低迷すると言われている中、注目されているのが「個人向け社債」です。
定期預金よりも金利が高く、比較的安全性も高いこともあり、これから個人向け社債を購入しようと考えている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、個人向け社債とはどのようなものか、メリット・デメリットについて解説します。
さまざまなリスクについても詳しくお伝えしますので、ぜひ参考にしてみてください。
個人向け社債とは
「債券」とは、資金調達のために発行される有価証券のことで、そのうち、企業が発行する債券を社債と言います。
社債には返済期限と金利が明記されており、企業が破綻しない限り、返済期日までの間は一定期間ごとに金利が支払われ、返済期日に元本が戻ってくるというものです。
比較的安全性が高いのも特徴です。
そして、多くの社債は機関投資家向けに発行されているため、最低購入単位は1億円程度にもなりますが、個人投資家でも購入できるように購入単位を低く設定したものが個人向け社債です。
個人向け社債の場合、10万円単位、あるいは100万円単位で購入できるようになっているため、個人投資家でも始めやすいと言われています。
公募債と私募債
個人向け社債は、大きく分けると公募債と私募債の2つです。
ここで、それぞれの内容を確認しておきましょう。
公募債
公募債とは、不特定多数(50名以上)の投資家を対象に発行される債券のことで、個人向け社債の多くはこれに該当します。
また、上場企業であるなど、一定の知名度のある企業でないと資金調達は難しいのが特徴です。
私募債
私募債とは、特定の人や企業に向けて発行される社債のことで、一般的に50人未満を対象にしたものです。
事前に特定した相手に購入してもらうことを前提とした社債ですので、何の関連もない個人投資家が遭遇するケースはほとんどないでしょう。
なお、ベンチャー企業などの知名度の低い中小企業が事業資金を調達する場合などに活用されるケースが多いようです。
個人向け社債のリスク
個人向け社債のリスクは比較的低いとされていますが、まったくリスクがないわけではありません。
そこで、どのようなリスクがあるのか確認していきましょう。
信用リスク
まず、もっとも注意が必要なのは信用リスクです。
これは、社債を発行している企業が破綻した場合などに利息や元本が支払われない可能性があるというもので、購入前には必ずその企業の事業内容や財務状況などを確認しておくことが大切です。
そのためには、目論見書や有価証券報告書、株価などもしっかりチェックしておきましょう。
また、格付機関による格付けなどを参考にするという方法もあります。
格付けとは、企業の業績や財務内容などを分析して、債券の元本や金利を支払う能力の安全度を順位付けすることで、評価が高いからと言って絶対に破綻しないというわけではありませんが、多くの指標を使って判断するという意味では有効です。
なお、格付けが高いほど信用リスクは低くなりますが利息も低め、格付けが低いほど信用リスクは高くなり利息も高い傾向があります。
価格変動リスク
社債の市場価格は、景気動向や金融政策、為替・海外金利などによって毎日変動するものですが、もっとも影響をおよぼすものが金利です。
金利が上昇すれば市場価格は下がり、金利が低下すれば市場価格は上がるというものですが、このように市場価格が変動するリスクを価格変動リスクといいます。
個人向け社債の購入後、まとまった資金が必要になるなどの理由で途中売却をしてしまうと、タイミングによっては元本割れすることも考えられますので、価格変動リスクにも十分注意が必要です。
流動性リスク
個人向け社債は途中売却が可能ですが、市場環境や信用リスクの変化によっては流動性が低くなるリスクもあります。
言い替えれば、売りたくても売れないというリスクです。
社債の売買は証券会社を経由して行われますが、市場環境や信用リスクの悪化状況によっては、売却したい社債を買い取ってもらえない、買い取ってもらえても非常に安価になってしまうなどのケースがあるということです。
証券会社としては、自社の健全性を維持する必要もあり、損することがわかっていながら買い取ることはできないという状況なわけです。
基本的に、個人向け社債は知名度のある企業が発行しているものですので、流動性リスクを大きく気にする必要はないという前提ではありますが、絶対に大丈夫だと言い切れないということは覚えておいたほうがよいでしょう。
個人向け社債のメリット
それでは、個人向け社債にはどのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
購入単位が低く設定されている
機関投資家向けに発行されている社債の購入単位は1億円程ですが、個人向け社債の購入単位は10万円というものもあり、個人でも十分購入できる設定になっています。
金利が高い
定期預金や国債と比較すると、個人向け社債の金利は高いのが特徴です。
元本割れのリスクが少ない
そもそも社債は、返済期日に元本が戻ってくるというものですので、基本的に元本割れのリスクは少ないと言えます。
ただし、社債を発行する企業が破綻した場合はこの限りではありませんので、絶対に安心というわけではなく、あくまでリスクが少ないものと認識しておいてください。
売却益を得られることもある
個人向け社債を売却する際、タイミングによっては売却益を得ることができるケースもあります。
これは、社債を発行する企業の業績の上昇や市場の変動などによって、証券会社が高額で買い取ってくれるというケースです。
個人向け社債デメリット
次に、個人向け社債のデメリットを確認していきましょう。
人気の社債が購入できない
社債には募集期間が設定されており、指定された期間外には購入できません。
また、募集期間中に申し込んだとしても、社債には限りがあるため人気の銘柄が売り切れてしまい購入できないこともあります。
特に個人向け社債の場合、ここ数年は投資家からも人気があるため、先着順で販売するようなケースでは即完売も珍しくありません。
なお、個人向け社債を購入するためには、証券会社に口座を開設する必要があります。
口座の開設には1週間程度かかることもあり、欲しい銘柄を見つけてから手続きを始めるのでは間に合わないことも考えられます。
そのため、情報収集を行いつつ、いつでも購入できるような事前準備をしておくことをおすすめします。
債務不履行のリスクがある
ここまでお伝えしてきた通り、社債は元本割れのリスクが少ないものの、企業の破綻などによっては債務不履行になることも考えられます。
そのため、購入後も定期的に企業の動向を確認し、危険な状況だと判断した場合には売却も検討する必要があるでしょう。
ただし、その際はくれぐれも慎重に見極めるようにしてください。
他の投資と比べるとリターンが小さい
個人向け社債の金利は、定期預金や国債と比較すれば高いものの、その他の投資に比べるとリターンが小さいというデメリットもあります。
そのため、短期間で大きく資産を増やしたいと考える投資家向きではないと言えるでしょう。
倒産リスクへの不安が長い
個人向け社債は、基本的に返済期日まで保有することになりますが、社債で設定されている返済までの期間は比較的長期であることが多く、短くても3~5年となっています。
その間、企業の倒産リスクにさらされてしまうというデメリットもあります。
まとめ
今回は、個人向け社債とはどのようなものか、さまざまなリスクやメリット・デメリットについてお伝えしました。
定期預金や国債に比べれば金利が高く、元本割れのリスクも低いなどの魅力がありますが、絶対に安心できるものではないので、しっかりリスクを理解したうえで購入するようにしましょう。
また、短期間で大きな資産が作れるものではないという点も含めて検討するようにしてください。